投資用アパート・マンション販売事業をグループ傘下に持つ㈱シノケングループ(福岡市博多区博多駅南1丁目、篠原英明社長)は昨年11月に介護事業コンサルティングの㈱リクロス(同市中央区、跡部宗教社長)を子会社化、介護関連事業に参入した。
シノケングループでは、これまでLPガス供給販売の㈱エスケーエナジーやビル管理の㈱ケイビイエム(現㈱シノケンアメニティ)、マンション開発・販売事業の㈱日商ハーモニー(現㈱シノケンハーモニー)など不動産関連事業に密着した分野を中心にM&Aや業務提携に取り組んできた。今回子会社化したリクロスはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の企画や、既存の住宅をバリアフリー化など改修し、高齢者向け賃貸住宅に用途変更、転用するコンバージョン企画、必要に応じて入居者が介護サービスを選択できる「高齢者サポート介護サービス選択型賃貸マンション」など、高齢者向け物件で600戸を手がけた実績がある。
高齢者向け住宅を中心とした介護関連事業への参入について、篠原社長は「介護サービス自体は異業種になるが、高齢者向け住宅の企画・開発は土地活用の一種でもあり、既存の不動産事業に関連する分野と捉えている。超高齢化社会において施設など受け皿の需要が高まる中で、専門企業と手を組んで当社のノウハウを生かすことができればと考えていた」と3年ほど前から参入を意識し、提携やM&Aを視野に入れて介護関連企業を探していたという。
介護事業に関する実績とノウハウを持つ企業がグループ内に加わることで、入居のターゲット層も広がる。「通常の賃貸住宅では万が一のときの対応や日頃のサポートに関する責任を持つことができないため、これまで高齢の方の独居はお断りしてきた。しかし、専門企業を子会社化し高齢者向けのサービスを提供できるようになれば、高齢者を新たに取り込むことができる」と管理物件の入居率向上に期待する。
現在は既存物件のオーナーを対象に、コンバージョンの提案を進めている。リクロスが企画する「高齢者サポート介護サービス選択型賃貸マンション」は、必要に応じてサービス内容を選択できるのが特徴。要介護2までの高齢者を入居対象に入居しやすい料金で、基本的な介護、医療、食事のほか、24時間対応のコールシステム、端末を携帯させる見守りシステムなど、選択できる生活支援サービスを充実させるという方針だ。
高齢者向け住宅で当面の目標は100戸。本格的な事業開始にあたり、12月には介護関連事業の統括会社として㈱シノケンウェルネスを設立。リクロスを事業会社に位置づけ、今後、シノケンウェルネス以下で、サ高住のほか住宅型有料老人ホームの展開なども視野に入れ、介護関連事業の拡大を図る。
また、今年は投資用アパート・マンション開発・販売事業の㈱シノケンハーモニーにシニア住宅事業部を設置する。「需要が高まるサ高住の受注体制を確立していく。介護関連事業を、不動産と並ぶ新たな柱に育てていきたい。空室対策だけでなく、収益物件として付加価値も高まる。全国に管理物件があるので、各地で展開していければ」と話しており、全国展開していく意向だ。第1号として、すでに東京で物件の取得・登録に向けて準備を進めている。
今後のM&Aについて、篠原社長は「これまでにも、企業との業務提携やM&Aで事業領域を拡大してきた。当面は、さらなる需要拡大が見込まれる介護関連について、積極的に展開を進めたい」と力を込める。M&Aのポイントは、既存事業に関連付けられるものであるかどうか。「シナジー効果が期待できるものに絞って、今後もタイミングが合えば参入を考えたい」と、さらなる新規事業についても前向きな姿勢を示した。
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