介護関連事業進出で高齢者層を取り込みへ シノケングループ

投資用アパート販売など不動産関連事業を傘下に持つ株式会社シノケングループ(福岡市、東証JASDAQ上場)の業績が好調だ。2013年12月期の連結ベースの経常損益は25億円と過去最高益を見込む。今期から介護関連事業に進出、高齢者層を取り込む。篠原英明社長(=写真)に、業績見通しと今後の展開について話を聞いた。
(取材・文 江口一樹福岡支店情報部長)

2期連続の最高益へ
 1990年6月、木造建築工事を目的に設立、株式会社シノハラ建設システムの商号にて投資用アパートの建築販売を始めた。2002年(平成14年)12月、JASDAQ(現・東証JASDAQ)に上場、05年10月に株式会社シノケンに、07年10月に株式会社シノケングループに商号変更するとともに事業部門を株式会社シノケンに会社分割、同社は持ち株会社となる。03年にマンション分譲販売の株式会社日商ハーモニー(東京、現シノケンハーモニー)を買収してマンション販売事業に進出、シノケンから不動産販売事業を移管した。10年1月には投資用マンション分譲販売の株式会社えん(福岡市)を持分法適用関連会社にした。
13年12月期(連結ベース)の年売上高は前期比11.6%増の260億円、経常損益は同55.9%増の25億円。経常損益は2期連続の最高益を見込む。

-業績が好調です。
「08年9月のリーマン・ショックで業績が落ち込んだことから原点に返ってしっかりとコスト管理を行いました。その結果、12年12月期で最高益を計上することができました」
「金利の先高感や税制改正、年金不安などが追い風になっているのは事実です。アベノミクス(安倍政権の経済政策)の影響は今年からなのであくまでプラスアルファだと思います」
「当社は投資用アパート・マンション販売のフロービジネスが今のところ主力ですが、同事業の伸びとともに、(不動産賃貸管理事業や金融・保証関連事業、LPガス供給販売事業などの)ストックビジネスが積み上がってきているのも好業績を支えています」

「サ高住」を取得、介護事業に参入
 12年11月、介護関連コンサルの株式会社リクロス(福岡市)を子会社化して介護関連事業に参入、東京都板橋区の5階建て55戸の寮を買収して今年8月にサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「寿(じゅ)らいふときわ台」の運営を開始。福岡地区などで管理するアパート・マンションの空室を、高齢者向けに仕様変更、介護関連サービス「楽らくブラン」を付加して入居率向上を図る。

-「寿らいふときわ台」の入居状況はいかがですか。
「現在のところ30%の申し込みをいただいています。転居シーズンでない夏に募集したことを考えるとまずまずで、1年くらいで80%の入居率を目指しています。すでに同じ板橋区で46戸の物件を取得、フルリノベーションして来年春には東京での第2弾となるサ高住をオープンする予定です。また、福岡市でもサ高住物件の取得を検討しています」
「当面は自己所有のサ高住300戸、『楽らくプラン』100戸程度を目標にしています。楽らくプランは要介護認定2くらいまでの方に入居していただき、それ以上の要介護度になると、サ高住に移っていただくようなシステムを考えております。少子高齢化が進むなか、入居者に高齢者を取り込むことは必要で、今後は当社の投資用アパート・マンションの既存の購入者に対しても提案していきます」

保険会社を買収
13年12月期第3四半期の売上高(200億2700万円)をセグメント別で見ると、アパート販売事業が前年同期比20%増の60億8900万円、マンション販売事業が同20.7%増の98億7600万円、不動産賃貸管理事業が同13.9%増の34億3300万円、金融・保証関連事業が同11.3%増の1億5800万円、その他事業(LPガス供給など)が同6.4%増の4億7000万円となっている。
今年5月にはジック少額短期保険株式会社が実施した第三者割当増資の引き受け及び株式の譲り受けにより同社の株式の50%を取得、子会社化した。

-保険会社買収のねらいは。
「現在約1万4000戸の賃貸物件を管理させていただいているのですが、入居者に対する家財保険などは損害保険会社に任せていました。グループで保険会社を持つことで、何か問題が発生した際にスピーディに対応することができます。また、同保険会社の提供する従来の保険商品に加え、入居者の方がケガをしたときにヘルパーをお願いするなどの保険内容をオプションで設定する商品も検討しております。」

-今後もM&A(企業の合併・買収)は行う予定ですか。
「国内企業だけではなく海外も含めて検討しております。対象はあくまで主力の不動産周辺事業となりますね」

土地活用事業に進出へ
 同社は投資家向けにアパートやマンションを建築販売するビジネスモデル。その分、収益性が高くなければならず、価格が安い狭い土地や変形地にアパートを建設したり、入居率が上がるようにデザインや間取りを工夫したりと独自のノウハウが鍛えられた。

-今後、新たな事業展開はありますか。
「これまでの投資用アパート・マンション建築のノウハウを活かして不動産所有者への土地活用事業に進出します。大手ハウスメーカーがライバルになりますが、これまで培ったノウハウを活かすことで収益性が高い有効活用が図れるのではないかと考えています。ここ数年で投資用アパート販売については、従来の土地をお持ちでない方へのアパート建築販売とあわせて、年間300棟の受注を目指していきます。」

-御社の課題は。
「現在の従業員の貢献により好業績を上げることができておりますが、今後更に業績を伸ばしていくには、既存社員の成長に加え、外部からの優秀な人材の獲得も必要です。そのような人材の確保・育成が当社グループの課題となっていくかと思います。」

-インタビューを終えて
 筆者が篠原社長に最初にお会いしたのはおよそ15年前。その間、構造計算書偽造問題(いわゆる姉歯事件)に巻き込まれたり、融資を受けていた日本振興銀行の破綻があったりしたが、その都度誠実な対応で危機を乗り越えてきた。まだ48歳と若いだけにさらなる飛躍を期待したい。